2021年10月6日水曜日

先生を、かえるとき


 音楽院でのことです。
3年前からピアノを習っていた、ヤスミンちゃんが、
転校することになりました。

お父さんの仕事の関係で、
突然、決まったのです。
お母さんから、
「パリ近郊に行きますが、いい先生をご存知ですか」と
聞かれました。

いえ、そこには知り合いはいませんけど、
音楽院があるのですから、そこへいらっしゃい、と
言ったはいいものの、
もう、新学年は始まっています。
新たに、新入生を受け入れるほど、空きがあるのかどうか。

たぶん、
来年を待ちながら、
個人レッスンを頼むことになるでしょう。

さて、
きのうが、ヤスミンちゃんとの最後のレッスンでした。
お家では、ダンボール箱だらけで、
引越しの準備の中、
ちゃんと練習してきました。
ふつうに、さっさと、レッスンをして、
最後は、お話の時間をとります。

今までも、あまりおしゃべりではない彼女は、
ここ数週間、もっと無口になっています。
小さな顔に、大きなマスクで、目元ぐらいしか見えませんが、
今にも、泣きそうな感じです。
私だって、寂しいです。


はなむけに、なにか、一曲弾きますから、どんなのがいいかしら?
と、尋ねると、うーん、としばらく考えては、
「楽しそうな曲」というお答え。
楽しそうな曲というのは、ピアノレパートリーでは、
どちらかというと数少ないです。
ボッケリーニのメヌエットを、思い出しましたので、
それを弾きました。

3度の和音が続くところなんて、
まるで、はっはっはっはっはっは、と笑っているようです。

ですが、
楽しい曲をリクエストされるときは、
ご本人が、悲しいとき、という確率は高いです。
それに、こんな時に「はっはっは」なんて笑うと、
悲しさが、よけいに増えるような感じです。

ヤスミンちゃんは、
相変わらず、何も言いません。
ただ、じっと、そこに座っています。
時間が来ても、立ち上がりもしません。
でも、
見つめ合っているなんて、気まずいのやら、寂しいのやら。
私が、一方的に、お話しをしてしまいます。

それではね、引き続き、ピアノ、エンジョイしてね、とお話ししているうちに、
次の生徒さんが、やって来ましたので、
ようやく、
さよならの時間になりました。
今、思い出しましたが、
ヤスミンちゃんは、「au revoir(さようなら)」も言いませんでした。
ハグをして、
ただ、帰って行きました。

ずいぶんと、
悲しいひと時でした。


いい思い出になりますように!





Chiyo

動画添削レッスン
フランス在住ピアノ講師

レッスン放題。動画、無制限。
初心者、歓迎中
2週間無料、試し。
(中期、長期割引あり)

↓ もっと読む
https://tateitoyoko.blogspot.com/p/blog-page.html


にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村

0 件のコメント: