数十年ピアノを教える仕事をしていて、
何が一番むずかしかと言いますと、
子どもさんが、ピアノを弾きたくないのに、
親御さんの意思によって、レッスンに来ている状況です。
これは、ごく、ごくたまに、です。
でも、そういうことがあると、とても残念に思います。
むずかしいと言うより、
「困った」と言うのが、本当の気持ちです。
こういう状況は、ない方がいいに決まっていますが、
なかなか、はっきり割り切れるものでもないです。
親御さんの、
「こういう技術を身につけさせたら、
将来、幸せが一つ増えるだろう」というお気持ちは、
よくわかります。
一方、子どもが勤勉に努力したくないのは、
いくらピアノが好きでも、
ほぼ当たり前のこと、なので、
いちいちそれを聞いて、
「あ、やりたくないのね。では、やめなさい」と
言っていたら、まずいのかもしれません。
コツコツ何かをやって、
だんだん身について行く喜び、というのを
ぜひ、味わってもらいたいものですし。
私は、
親御さんと子どもさんのハザマに立って、
なだめたりすかしたり、
手を替え品を替え、いろいろやります。
根本的に、私は子どもさんの味方です。
必要なら、親御さんに訴えたり、
子どもの弁護士みたいなこともします。
先日、
ピアノはいいけど、ソルフェージュがいやです、
という中学生の女の子と話しをしていました。
そして、
大笑いしました。
その長いソルフェージュの授業について、
2時間半の授業、と話すのです。
「あら、そんなに長かったかしら?」
と言うと、
「あ、違った、2時間だった。
1時間半の時もある」と訂正したので、
「そう、それほど長〜い感じがしたのね。
2時間なら、映画の長さ。
おもしろい映画だったら、
2時間なんて、あっという間にすぎるのに、
つまらない映画だと、長く感じるものね」
「うん、まぁ、そんなところだけど、
映画じゃなくて、連続ドラマよ!」
なるほど。
毎週、性に合わない連続ドラマを見に来てるのね、
と、2人で大笑いをしました。
(ソルフェージュの先生には、ぜったい内緒です。
ゴメンナサイ)
と、こんな風に、どこかで、
ピアノのレッスンも、
つまらない連続ドラマだ、と思われているかもしれません。
私には、解決法はないのですが、
せめて、生徒さんの気持ちを聞いてやれたら、と
思ったりします。
Chiyo
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