フランスの音楽院では、
けっこうソルフェージュが、きらわれています。
私の勤めるところでも、
楽器を習う生徒さんが、やめていく時の第一の理由に、
「義務ソルフェージュ」があがっています。
楽器を練習するのだって、
たまには、アキアキすることもあるくらいなのに、
その上、
ソルフェージュなんて。。。という感想になるようです。
特に、中学生。
まぁ、わかります。
さて、
先日、やはり同じ理由で、
ピアノをやめていく中学生の女の子がありました。
グッときてしまったので、書いておきます。
***
いつも、
ちょっとふてくされているような感じの生徒さんです。
ピアノは、まぁまぁ練習していますが、
それより、今は、
バレエだとか、クライミングだとか、
別なことをやりたい、と言っています。
でも、やめると決めてからは、
どういうわけか、張り切ってピアノを練習するようになります。
最後のレッスンでは、
もう、がんばって、曲を最後まで仕上げています。
なかなかいいのです。
「へぇ、こんなに練習したの、初めてでしょう?」
「うん、自分でもすごいと思う」
そして、
時間が来ても、なかなか帰りません。
ちょっぴり照れながら、
「今まで、ありがとうございます」なんて、言っています。
また、
時間かせぎなのかどうだか、
「あらまぁ、きょうは、先生と同じコーディネートですね!」なんて、
全然関係ないことも、言います。
見れば、
彼女も私も、白いTシャツなのは同じですが、
私は、オレンジ色のパンタロン、
彼女は、からし色のショートパンツです。
オレンジとからしでは、ぱっと見では、あまり似ていませんが。
そう見えてしまったのかどうか。
「先生のおかげで、
ピアノが好きになりました」なんていうフレーズが、
とうとつに飛び出してきたりもします。
前もって、言うことを準備してきたのかどうか。
今まで、あまり愛想が良くなかったので、
この言葉には、
ちょっとびっくりします。
私も、なんて言っていいかわからなくなります。
思いついて、つとめて明るく、
「また、いつでも、顔見せにおいで」と言えば、
「えーと、何曜日だったらいいですか?」と聞いてくるのです。
可愛らしいなぁ。
そして、
なんだか、
こちらまでオロオロしてしまいます。
まぁ、いいか、
ピアノが好きになったみたいだから、
この先、うんと楽しめるでしょう、
少しは、お役に立てたかな、と、思いました。
家に帰ってからも、思い出しては、
うれしいのが半分、
なごりおしいのが半分。
心がどぎまぎした瞬間だったなぁ、と思い返しました。
Chiyo
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