追い求めていた音色に出会った日と孤独感が消えた日 ~この一年を振り返って~
Chiyo先生に巡り会ったのは一年前、
「60の手習い」で通い始めた近所のピアノ教室がコロナで閉鎖されて、
一年余りが過ぎた頃でした。
教室閉鎖後もピアノを続けたかったのですが、
一人でピアノを続けていく程の基礎力は身に付いておらず、かと言って、
コロナが猛威を振るっていたアメリカで新しい教室を探すべきではないと思ったので、
どうしたらよいものか、ピアノを前に悶々とした毎日を過ごしていました。
ある日、
「大人ピアノ学習者の方のブログを読めば、
ピアノを独学でやって行く動機づけができるかもしれない」と考えて読み始めたブログ集の中に、
『ピアノオンライン講座「ふだん塾」』のブログがありました。
ブログ中のサンプル動画を拝見し、
まずChiyo先生の上品な語り口に心を捉えられました。
「こんな先生なら、60代初心者の私でも安心して指導が受けられるかもしれない」
ラインで受講できるというシステムも、
時差を気にしなくて良いので好都合でした。
すぐにでも受講を申し込みたいと思いましたが、
ひとつ問題がありました。
数年前、庭の草取りで右手の人差し指を傷め、
その指でピアノを弾くことが出来なくなっていたのです。
こんな状態で指導して頂けるだろうか?と不安でしたが、同時に、
子供の頃から持ち続けた「ピアノを弾く夢」を簡単に諦めることができないという気持ちがあって、思い切ってChiyo先生にご指導をお願いするメールを出してみました。
すると、すぐに快いご返事を頂き、
Chiyo先生とのピアノライフがスタートしたのです。
最初に先生に言われたのは、
自分の指を大切にすること、
それを優しく労わる様に言って頂き、
自分は今までそんなことを考えたこともなかったと思いました。
私は高度成長期の日本に育った者らしく、
何でもがむしゃらにやらないと気が済まない所があって、
日々の暮らしの中でも、自分の体や心を労わることを後回しにして来たのです。
ピアノの弾き方でも、
ただ音符を追いかけてがむしゃらに弾いていたので、
何だか雑な音がして、自分の弾く音が好きになれませんでした。
Chiyo先生が奏でられる美しいピアノの音色との違いは何なのだろう?
訝しがる私に、先生は鍵盤に当てる指の場所や手の形について、
初歩から丁寧に教えて下さいました。
とは言え、還暦をとうに過ぎた私が強張った手の形を直すのは、
柔らかな手を持つ子供のように容易でははありません。
くじけそうになる度に、
Chiyo先生の優美な手の動きを目の前に思い浮かべ、
できるだけ真似をしてみようと努力を重ねました。
悪戦苦闘する数か月が経ったある日のこと、
突然自分が弾いているピアノから耳障りではない音が聴こえて来たのです。
それは私がずっと追い求めていた、澄んだ音色でした。
私は少し物悲しくロマンチックな曲が好きなので、
バッハの短調のメヌエットや先生からご紹介頂く他の作曲家の小品と合わせて、
指の訓練のためにツェルニーの「リトルピアニスト」を指導頂いています。
技術に関しては、
音楽の知識がないので専門的な説明は出来ないのですが、
頑張ろうと力を入れるよりも、力を抜いてだらりと弾く方が良いとか、
リラックスして幸せな気持ちになれるスピードで弾くとか、
「目から鱗」的なことを沢山教えられました。
この一年間、
Chiyo先生から送られるビデオは、
一貫して、的を得た指摘とやる気を引き出させる素晴らしいものでした。
「ふだん塾」ブログを初めて拝読した時に直感した“安心感”は
今日まで一度もブレることなく続き、
その上、安心感以上の感動的な出来事もありました。
ある日、送られてきた動画の中で、
先生は右手の人差し指を他の指より高く上げて、
その指で鍵盤に全く触れずにピアノを弾いていらっしゃったのです。
(* 今、野ばらさんが使えない2の指は使わずに、お手本を弾いています。Chiyo注)
私は人前で自分の指のことを話すことはほとんどないのですが、
一人でピアノに向かう時、不自由な人差し指を見て、
ふと、「やっとピアノを習える環境になったのに、この指が使えないなんて…」
と自分の不遇を嘆き、
世の中から一人取り残されたような孤独感に襲われることがありました。
けれど、Chiyo先生が不自由な指でもピアノを優雅に奏でることが出来るというお手本を示して下さったおかげで、可能性が信じられるようになったし、
この困難に向かって決して孤軍奮闘している訳ではないと教えられました。
実際、その日を境に私の心から孤独感が消えたのです。
コロナの真っ只中に「ふだん塾」に参加し、
素晴らしい先生の下で音楽の喜びを享受出来るのは何とも幸運なことだと思っていましたが、今はその時よりもっと不穏な空気の世界になってしまいました。
それでもピアノに向かう時、痛む心が音楽で癒されるのを感じます。
世界中の人達に、同じような癒しを届けることが出来たら、
どんなに良いだろうと思う今日この頃です。
(10/05/2022)
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